ふでづかい
「に」「ね」「ら」などが一筆書きのようにつながり(脈絡)があります。字面が大きい分、つながり(脈絡)によって一字一字のまとまりを持たせ、流麗さを失わないようにしているように感じます。「まわし」はおおらかなカーブを描き、「る」「す」にみられる「むすび」も大きくなっています。「はらい」もゆったりとして水平にちかくなっています。

まとめかた
 新聞活字は扁平で設計されています。そのためかボディを最大限生かすというような字面になっています。全体的に正方形に内接し、字型の差が少なく、均一になっています。そのために字並びのラインは揃ってみえます。

ならびかた
 ベタ組みを基本に設計しています。

九州タイムズ社
九州タイムズは短期間で姿を消してしまったので、詳細はほとんどわからない。新聞紙面によれば、九州タイムズ社の所在地は「天神町一七番地」、編集印刷発行人は大島右助とある。天神町は現在の天神一丁目にあたる。

原資料は、『新聞の歴史』(羽島知之著、日本図書センター、1997年2月)に掲載されていた「九州タイムズ」の1946年(昭和21年)4月14日付けの第一面の図版です。
 連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は「独占的産業統制を廃止する」との民主化政策を打ちだしました。その目的は財閥の解体にあったのですが、その指令は新聞業界にもおよび、朝刊を発行する新聞社が夕刊を発行することを禁止されました。
 しかしながら当時の国民は情報に飢えていましたので、全国の新聞社は別会社を設立して夕刊の発行に踏みきりました。さらにはさまざまな新興紙がぞくぞく発行されました。
 福岡都市圏では、朝日新聞系の「九州タイムズ」、毎日新聞系の「新九州」が夕刊専門紙として発行され、地元の西日本新聞社の支援をうけた「夕刊フクニチ」が発行されました。この3紙のうち、もっとも形象が整っていると感じられた九州タイムズをとりあげることにしました。


■組み見本

カタカナも同様に、汎用性を優先させて正方形のボディで制作しました。抽出できなかったキャラクターは、抽出できたキャラクターにイメージをあわせて制作しました。

漢字書体は、「美華」です。

『わたくし率 イン 歯ー、または世界』(川上未映子、講談社・講談社文庫、2010年)

『字音假字用格』は漢字カタカナ交じり文なので、カタカナはだいたい揃えることができました。「ネ」「ヰ」「マ」がありませんでしたので、書風をつかんだ上で新たに書き起こしました。
 そのほかの文字で大きく形姿を整えたのはありません。全体的に統一感を醸しだすように筆づかいや形姿を整えていきました。
『字音假字用格』は漢字カタカナ交じり文なので、カタカナはだいたい揃えることができました。「ネ」「ヰ」「マ」がありませんでしたので、書風をつかんだ上で新たに書き起こしました。
 そのほかの文字で大きく形姿を整えたのはありません。全体的に統一感を醸しだすように筆づかいや形姿を整えていきました。

オリジナルは新聞活字なので扁平ボディで設計されています。扁平ボディのままで復刻することも考えられましたが、汎用性を優先させて正方形のボディで制作することにしました。まずは抽出した文字をボディが正方形になるように変形しました。
 資料の状態が悪く不鮮明でしたので、直接アウトラインをとるという方法(双鉤填墨法)での復刻は不可能でした。この書体に限っては敷き写しにする方法(嚮榻法)によって制作することにしました。その起筆や終筆などの筆法は、現代の新聞書体を参照に、角をたてた処理を採用しました。
 もともとは現在の新聞よりもはるかに小さなサイズの書体でした。そういう条件のなかでふところをできるかぎり大きくして読みやすくしたのだと思われます。したがって復刻した書体においても、小さいサイズで使用されたときにその効果を発揮するのではないかと思われます。