ふでづかい
書写されたものをそのまま木版に彫刻したもので少しアウトラインの単純化がみられますが、書写に忠実になっています。

まとめかた
字型による比率の差が大きく、自然な組み立てになっています。

ならびかた
木版印刷ですが、字詰めは活字組みに想定すると「ベタ組み」です。横の並びも揃っているので、文字の大きさ、太さなどがよく揃っているように感じられます。

吉川半七
 現在の吉川弘文館の創業者とされている。1863年(文久3年)に貸本業を営んでいた近江屋嘉兵衛の養子になり、1870年(明治3年)には新店舗、近江屋半七書店を開業している。
 1877年(明治10年)より出版業も兼ね、多くは「吉川半七」個人名をもって発行所としていた。1887年(明治20年)に出版専業となっている。
 なお、吉川弘文館の名称は没後の1904年(明治37年)になってから使用されている。

原資料は旧制(尋常)中学校国語科教科書である『国文中学読本』(1892年)で、吉川半七の名前で出版されています。木版印刷で四つ目綴じです。
 本格的に小学校教科書が編纂されたのは、1885年(明治18年)に内閣制度が創設されてからです。小学校令に「小学校ノ教科書ハ文部大臣ノ検定シタルモノニ限ルヘシ」と規定し、検定制度が実施されました。
 文部省編纂局の教科書も、編輯局長に就任した伊沢修二があらたな編集体制のもと、『読書入門』(1886年)、『尋常小学読本』(1887年)、『高等小学読本』(1887年)などを完成させました。
『読書入門』は尋常小学校第1学年前期、『尋常小学読本』は尋常小学校第1学年後期から第4学年末、『高等小学読本』は高等小学校第1学年より第4学年を対象にしたものです。前者は漢字ひらがな交じり文、後者は漢字カタカナ交じり文になっています。
 文部省編輯局の『尋常小学読本』『高等小学読本』は活字版ですが、当時の民間発行の教科書では、まだ整版(木版)が一般的で、活字版によるものは少なかったと思われます。


■組み見本

カタカナは6キャラクターだけしかありませんでした。この6キャラクターの書法にあわせて、他のキャラクターを制作しました。

漢字書体は、
 左:林佶
 中:開成
 右:熱河

準備中

『字音假字用格』は漢字カタカナ交じり文なので、カタカナはだいたい揃えることができました。「ネ」「ヰ」「マ」がありませんでしたので、書風をつかんだ上で新たに書き起こしました。
 そのほかの文字で大きく形姿を整えたのはありません。全体的に統一感を醸しだすように筆づかいや形姿を整えていきました。
『字音假字用格』は漢字カタカナ交じり文なので、カタカナはだいたい揃えることができました。「ネ」「ヰ」「マ」がありませんでしたので、書風をつかんだ上で新たに書き起こしました。
 そのほかの文字で大きく形姿を整えたのはありません。全体的に統一感を醸しだすように筆づかいや形姿を整えていきました。

ひらがなは「ん」をのぞいて抽出することができました。
漢字、カタカナと同じような「うちこみ」があります。「まわし」は、「あ」「ぬ」にみられるように、緩急をつけて一度筆をゆるやかにしてからはらっているので、おおらかなカーブというよりは、直線をつなぐ意識で描かれているようです。そのために少し尖った印象を受けます。
 一方で、「せ」「ら」「き」などのように一字のなかの脈絡(つながり)が残されており、「ま」「よ」「ゑ」のように次の文字へのつながり(脈絡)もみられます。