●活字書体をまなぶ人へ
POD『タイプフェイス・デザイン事始』

著者より
石井研堂著『少年工芸文庫第八編 活版の巻』(1902年11月 博文館)は、少年のために書かれた12冊シリーズのうちの1冊で、明治時代の活字版印刷の周辺がいきいきと書かれています。とくに現在の活字書体設計について、21世紀を生きる中学生にも理解できるような入門書ができないかと思い、まとめたのがこの『タイプフェイス・デザイン事始』です。

B6判 188ページ 2,100円(消費税込・送料別)2000年6月1日発行
ISBN:4-8354-7001-X

●活字書体をつかう人へ
POD『タイプフェイス・デザイン探訪』

著者より
今井直一著『書物と活字』(1949年4月 印刷学会出版部)は、太平洋戦争後まもなくして出版された活字書体についての書物です。このころ川田久長著『活版印刷史』(1949年3月 印刷学会出版部)、山岡謹七著『造本と印刷』(1948年1月 印刷学会出版部)なども出版されています。このような活字書体設計についての書物ができないかと思い、まとめたのがこの『タイプフェイス・デザイン探訪』です。

B6判 202ページ 2,100円(消費税込・送料別) 2000年12月1日発行
ISBN:4-8354-7007-9

●活字書体をつくる人へ
POD『タイプフェイス・デザイン漫遊』

著者より
中村征宏著『新技法シリーズ36 文字をつくる』(1977年4月 美術出版社)は、わが国の活字書体設計者自身がしるした数少ない書物です。ただ新技法シリーズということから、当時の制作技法に多くのページがさかれているのは残念なことでした。むしろ活字書体設計についての体験談を書き残せないかと思い、まとめたのがこの『タイプフェイス・デザイン漫遊』です。

B6判 202ページ 2,100円(消費税込・送料別) 2000年9月1日発行
ISBN:4-8354-7003-6

スターダスト・キッズ (2010年4月1日しるす)

 佐野元春の1981年のなつかしいヒット・ナンバー「Stardust Kids」にのせて、ほしくず工房の書体についての思い出をふりかえってみたい。そのスタートは、『タイプフェイス・デザイン漫遊』(今田欣一著、2000年、株式会社ブッキング)にある。その第4章に「悠久の持続力」として発表した試作書体を持続したのが、ほしくず工房の書体なのである。

ほしくずベーシック
「欣喜明朝W3」(161ページ)、「欣喜ゴシックW3」(162ページ)の和字書体部分と、「欣喜楷書W3」(166ページ)、「欣喜行書W3」(167ページ)、「欣喜隷書W3」(168ページ)の和字書体部分を、それぞれ分離独立させ、制作のコンセプトを統合して制作したのが「ほしくずベーシック」3書体である。
 まず明治時代の木版教科書『中等国文 二の巻上』(1896年、東京・吉川半七藏版)の本文の楷書体に組み合わされた和字の書風を参考に「ゆきぐみノーマル」を制作した。つづいて手紙文の行書体に組み合わされた和字の書風を参考に「はなぐみノーマル」を、昭和初期の地図『東京』(1934年、大日本帝国陸地測量部)にあらわれた和字の書風を参考に「つきぐみノーマル」として制作した。
 これが、「欣喜楷書W3」、「欣喜行書W3」、「欣喜隷書W3」の和字書体に相当するものである。さらに「欣喜明朝W3」の和字書体に相当するのが「ゆきぐみノーマル」の字面を大きくした「ゆきぐみラージ」であり、「欣喜ゴシックW3」の和字書体に相当するのが「つきぐみノーマル」の字面を大きくした「つきぐみラージ」である。
 このようにして、漢字書体の明朝体と楷書体、ゴシック体と隷書体、さらには行書体までをふくめた基本3系統の統括的な和字書体グループが誕生したのである。今後はそれぞれのファミリー化を計画している。

ほしくずコンテンポラリー
「欣喜セイムW3」(175ページ)をベースに、「欣喜現代文字W3」(173ページ)、「欣喜アンチックW3」(176ページ)を組みあわせて形成したのが「ほしくずコンテンポラリー」3書体である。
 基本としたのが『BOOK OF SPECIMENS」(1877年、平野活版製造所)所収の欧字書体「ROMAN」「GOTHIC」「ANTIQUE」、および『座右之友』(1895年、東京築地活版製造所)所収の漢字書体「五號明朝」「五號ゴチック形文字」「五號アンチック形文字」を現代的な基本3書体と位置づけ、それぞれに対応する和字書体を現代的に解釈して設計することにしたのである。
「欣喜セイムW3」は、その名称も「セイム」としてリデザインした。当時から欧字書体のローマン体、漢字書体の明朝体と組みあわせる和字書体として制作したものである。つぎに、欧字書体のサンセリフ体、漢字書体のゴシック体と組みあわせる和字書体として、「欣喜現代文字W3」を「セイム」のフォルムにあわせた「テンガ」を制作した。また欧字書体のスラブセリフ体、漢字書体のアンチック体(横太明朝体ともいう)と組みあわせる和字書体として、「欣喜アンチックW3」を「セイム」のフォルムにあわせた「ウダイ」を制作した。
 その展開は、「セイム・モダン」「テンガ・モダン」「ウダイ・モダン」、「テンガ・ラテン」「テンガ・ファンテール」(いずれも仮称)へとつづいている。

ほしくずファンシー
「欣喜ラウンドW3」(163ページ)をもとに、「欣喜図案文字W3」(172ページ)、「欣喜江戸文字」(171ページ)、「欣喜イノセントW3」(177ページ)を展開して制作したのが「ほしくずファンシー」3書体である。
 すなわち『活版総覧』(1933年、森川龍文堂活版製造所)所収の装飾用漢字書体の「篆書体」「丸ゴチック体」に対応する和字書体として再構築することにしたものである。制作にあたっては『図案文字大観』第五版(矢島週一著、1928年、彰文館書店)なども参考にした。
 具体的には、まず「欣喜イノセントW3」を「アンジェーヌ」として制作、つづいて「欣喜図案文字W3」を丸ゴシック体にあわせた「ヌーボー」として制作した。もうひとつは、もともとの丸ゴシック体「欣喜ラウンドW3」、「欣喜江戸文字」の展開を検討した上で、あらたに映画の字幕書体を参考にした「テアトル」を制作した。

ほしくずカーシヴ
 第3章の「やまとという和字」でとりあげた「はつひやまと」「わかばやまと」「みのりやまと」(152ページ)は、もともとは自費出版した「いろいろいろは」(1991年)で発表していた和字書体を、フォントワークス株式会社に提供するために、同社の「マティス」の漢字書体に適応させたものであった。そのために「いろいろいろは」のときのコンセプトとは若干の変更を余儀なくされている。
 そこでもう一度、個人の筆跡を様式化し公共の活字書体とするという原点にたちかえり、『人と筆跡―明治・大正・昭和―』(サントリー美術館、1987年)の図版などを参考にして全面的に見直し、「ほしくずカーシヴ」3書体として再生させた。
「はつひやまと」となっていた書体は「たうち」として、「わかばやまと」となっていた書体は「さなえ」として、それぞれ新しい生命が吹き込まれた。「みのりやまと」となっていた書体は、参考資料から全面的に設計しなおすことからはじめて、「いなほ」として制作したものである。
 このように「ほしくずカーシヴ」3書体は、「マティス」の漢字書体に適応させた「はつひやまと」「わかばやまと」「みのりやまと」とは、字面も太さもことなり、書写体としてのイメージを強くしたのである。

 ほしくず工房の書体は、和字書体のみである。『タイプフェイス・デザイン漫遊』に掲載したさいには漢字書体も試作していたが、その書体の範疇においては、すでに優れた漢字書体が多く設計されているのである。新たに制作するには、それをしのぐような書体が必要だが、長年にわたる先人のちからには遠くおよばないであろう。
 今までにない漢字書体の制作にこそ、ちからを注ぐべきだと考え、漢字書体は制作しないことにした。使用上の便宜を考えるならば、今後の展開によっては、他社書体とのコラボレーションもありえるだろう。

ほしくずストロベリー・ブルーベリー・ラズベリー
「欣喜楷書W3」、「欣喜行書W3」、「欣喜隷書W3」は、1996年にまでさかのぼれば、硬筆書体として試作したものであった。そのコンセプトを引き継いだ「ストロベリーW3」「ブルーベリーW3」「ラズベリーW3」としても制作している。ちなみに「ストロベリー」「ブルーベリー」の漢字書体は『書道教範』(井上千圃書、1933年、文洋社)のペン字手本を参考にした。「ラズベリー」では『中国硬筆書法字典』(司恵国・王玉孝主編、2003年、世界図書出版公司北京公司)も参考にしている。